避妊用ピルには、大きく分けて事後避妊薬と低用量経口避妊薬の2種類があります。
緊急避妊ピルはモーニング・アフターピルとも呼ばれ、避妊をできずにセックスしてしまった後にできるだけ早く服用することで、妊娠を防ぐピルです。
次の日の朝に飲むことが多いことから、海外では「モーニング・アフターピル」や「プランB(Plan B)」と呼ばれています。
緊急避妊薬にはさまざまな種類があり、すぐに服用するほうが避妊の確率は高くなりますが、セックスから5日間も使用できるお薬もあります。
避妊をできずにセックスをして、妊娠を望まない方はできるだけ早めに医師にご相談ください。
緊急避妊薬は、個人輸入代行サービスの通販サイトでも購入することができます。
しかし、緊急避妊薬はセックスした後に毎回服用することは絶対に避ける必要があります。あくまでも、避妊をできなかった緊急の場合にのみ服用するようにしてください。
経口避妊用ピルはOC(Oral Contraceptives)とも呼ばれており、妊娠を防ぐために経口で毎日1錠を服用するお薬です。正しい方法で服用すると、高い確率で妊娠を防ぐことができます。
妊娠を防止する用途の他、月経困難症や子宮内膜炎の治療、そしてニキビの治療にも用いられます。
日本では2.9%とあまり普及されていませんが、オランダでは50%近く、フランスでは33.1%、イギリスでは26.1%と高くなっています。
緊急避妊薬(ピル)には、ヤッペ法(Yuzpe)と レボノルゲストレル法(LNG)単剤内服方法があります。
すべての事後避妊薬はセックスの後にできるだけ早く服用することで効果を高めることができます。
① ヤッペ法:プラノバール錠
ヤッペ法は旧式で以前使用されていた方法です。黄体ホルモンであるレボノルゲストレルが0.5mg, 卵胞ホルモンであるエチニルエストラジオールが0.05mg配合されている「プラノバール」をセックスの後72時間以内に2錠服用し、12時間後にまた2錠服用するという方法です。
② レボノルゲストレル法(LNG):ノルレボ錠
現在では主にレボノルゲストレル法(LNG)が緊急避妊の方法になっています。「ノルレボ錠」またはそのジェネリック医薬品をセックスの後72時間以内に1錠服用します。
ノルレボ錠には黄体ホルモンであるレボノルゲストレルが1.5mg含まれています。
セックスをしてから72時間以内に服用すると、妊娠のリスクを最大89%減らすことができます。24時間以内に服用した場合、約95%の効果があります。
排卵を抑制し、子宮頸管の粘膜を厚くすることで精子が着床しにくくなり、受精を防ぎます。この作用により妊娠を防ぎますが、精子が着床してしまった後では遅いため、できるだけ早く服用する必要があります。
黄体ホルモンのレボノルゲストレルはヤッペ法の「プラノバール」にも、そして第2世代の低用量ピルに含まれているものと同じ成分です。日本でもよく処方されている「トリキュラー」や「アンジュ」に含まれている黄体ホルモンです。
③ エラ(ella):ウリプリスタル酢酸エステル(ulipristal acetate)
日本では未承認ですが、欧米では5日間(120時間)後まで服用することができるエラ(ella)という新しい緊急避妊ピルがあります。
エラにはウリプリスタル酢酸エステルという成分が30mg含まれています。選択的プロゲステロン受容体調節剤という医薬品のクラスに属するお薬で、プロゲステロン受容体に作用し、卵巣からの卵子の放出を停止または遅延させることによって作用します。また、受精卵が子宮に着床しにくくします。
アメリカではノルレボ錠を薬局で購入することは可能ですが、エラ(ella)は医師からの処方箋が必要になります。
イギリスではノルレボ錠もエラも薬局で薬剤師に相談することで購入することができます。
避妊用アフターピルであるノルレボ錠のジェネリック医薬品としてアイピル(i-pill)が有名です。アメリカやヨーロッパにも支社を構えるインドの製薬会社であるPiramal Healthcare社が製造販売しています。
他には、Leeford Healthcare社が製造販売しているポストフォン (Postpone)とユニバーサル・ライフ・サイエンシズ社が販売しているオーピル (O pill)などがあります。
病院でノルレボ錠を処方してもらうとジェネリック医薬品であっても6500円〜30000円と高額になるために、もしもの時のためにアイピルを個人輸入の通販で購入しておくのも良いでしょう。
低用量避妊ピル(OC)は毎日服用するタイプのお薬です。
低用量避妊ピルは大きく分けて混合型のコンビネーション・ピル(Combination Pill)と、ミニピル(Mini Pill)の2種類があります。
①混合型:コンビネーション・ピル(Combination Pill)
混合型(配合錠)の避妊用ピルは最もポピュラーなタイプのピルです。
混合型には普通、基本として卵胞ホルモン(エストロゲンestrogen)であるエチニル エストラジオールが含まれており、黄体ホルモンであるプロゲスチン(progestin)の種類により開発承認された世代別に別れています。
エストロゲンの含まれている量が高いと副作用の出る確率も高くなりますので、低用量が良いとされています。
① 第1世代:ノルエチステロン(Norethindrone)
長い間欧米で使用されてきた成分です。マイルドな効果ですが、むくみなどの副作用がでることもあります。稀に血栓症のリスクがあるとされています。
現在では月経困難症の治療に使用されることがありますが、避妊用にはあまり使用されなくなりました。月経困難症や子宮内膜症の治療に低用量のルナベル配合錠LDが用いられることがあります。
他のコンビネーション・ピルの副作用でうつ病の症状があらわれた場合は、第1世代のピル試すと良いとされているピルです。
製品例:ルナベルLD、フリウエル LD
② 第2世代 :レボノルゲストレル(Levonorgestrel)
避妊効果は強いですが、エストロゲン作用もアンドロゲン作用も強いため、副作用も出やすいというデメリットがあります。
アンドロゲン作用が強いと、男性ホルモンが活性になるので、多毛症、ニキビ、むくみなどの副作用がでることがあるとされています。
不正出血がでにくく、安定した周期を作ることができるので、好む方もいます。
製品例:トリキュラー、アンジュ
③ 第3世代 : デソゲストレル(Desogestrel)
第2世代のレボノルゲストレルの作用が増強されたため避妊効果も高いですが、血栓症の副作用が出やすい成分とされています。アンドロゲン作用は第2世代と同じくらいで、エストロゲン作用が増強されたために相対的に少なくなったとされ、アンドロゲン作用の脂質代謝への影響からくる副作用が少し軽減されたとされています。
製品例:マーベロン、ファボワール、ダイアン35
④ 第4世代 :ドロスピレノン(Drospirenone)
一番新しい世代の黄体ホルモンなので、これまでの欠点が改善された成分です。
体内の水分や電解質を調節するホルモンの分泌を抑える働きがあります。
アンドロゲン作用がほとんどないため、多毛症、ニキビなどの副作用はみられません。利尿作用があり、むくみにくいとされています。
子宮内膜を薄くする作用が強いので、子宮内膜症の治療にも用いられます。
血栓症のリスクはあるとされています。
ドロスピレノンはカリウム値を高める可能性があるため、腎臓、肝臓、または副腎に疾患のある女性は使用しないでください。
製品例:ヤスミン、ヤーズ
① 1相性
1相性ピルは1か月サイクルで使用され、各錠剤に同じ用量のホルモンが含まれています。
28錠タイプは最後の週に、ホルモンが含まれていないピルを飲むことで生理を迎えます。
21錠タイプは最後の週に7日間休薬すると、生理が来ます。
製品例:ヤスミン、ダイアン35、ヤーズ、マーベロン
② 2相性、3相性
これらのピルは1か月のサイクルで使用され、サイクル中に異なる種類またはレベルのホルモンが含まれています。
28錠タイプは最後の週の間に、ホルモンが含まれていないピルを飲むと生理がきます。
21錠タイプは最後の週に7日間休薬すると、生理が来ます。
製品例:トリキュラー、アンジュ
③ 長期サイクルのピル
通常、13週間のサイクルで服用されるピルです。 12週間はホルモンの含まれたピルを服用し、サイクルの最後の週にホルモンが含まれていないピルを服用し、生理を迎えます。その結果、生理は1年に3〜4回しかなくなります。
製品例:Seasonale、Seasonique、Lybrel
黄体ホルモン(プロゲスチン)のみが含まれたピルはミニピル(Mini Pill)と呼ばれています。エストロゲンが含まれていません。
ミニピルは、健康や副作用が原因でエストロゲンを摂取できない女性に適した選択肢です。
ミニピルは子宮頸管の粘液を厚くし、子宮の内膜を薄くすることで精子が卵子に着床するのを防ぎます。ミニピルは排卵も抑制しますが、一貫して抑制するのではありません。最大限の効果を得るためには、毎日同じ時間にミニピルを服用する必要があります。
服用を中止するとすぐに生理が戻ってくるのも特徴です。
副作用として不正出血がみられます。
これまでに混合型ピルを服用し血栓症の副作用が見られた場合、授乳している場合、エストロゲンの副作用が懸念される場合はミニピルを医師が勧めることがあります。
製品例:ディナゲスト、ノリディ、セラゼッタ、Camila , Ortho Micronor
日本はピルと呼ばれる避妊薬の後進国と呼ばれています。そんな中でも、少しずつ避妊用ピルはポピュラーになりつつあります。
欧米ではピルの普及率が高く、10%〜50%近くの女性が服用しているのに対し、日本では2.9%の女性が服用していると言われており、世界的に見ても日本の低い普及率があります。
ピルが日本で承認されるようになったのは1999年と遅く、その後も積極的に服用する動きは起きませんでした。
しかし、ピルは安全で手軽に避妊をすることができる、女性にとっては強い味方です。産婦人科医の多くはピルを服用していますが、患者を説得することに時間がかかることから、保険が適用されない現在の日本の医療事情により、なかなか広まっていないのが現状です。
ピルを上手に活用すると、リプロダクティブヘルス(Reproductive Health)と海外では呼ばれている女性の生殖器官の健康を保つための大きな味方になります。
この機会にピルの服用を検討してみてはいかがでしょうか。