1)ED(勃起不全)としてのシルデナフィルの効果・作用機序
① ED(勃起不全)としてのシルデナフィルの効果
ED(勃起不全)とは、男性が性交を行うために十分な勃起を得ること、または維持することが困難な症状を指します。EDの原因はいくつかあり、最も一般的な原因は、陰茎に血液を運ぶ動脈が狭くなってしまうことが挙げられます。また、心理的な理由から引き起こされることもあります。
シルデナフィルは、体内のホスホジエステラーゼタイプ5(PDE5)と呼ばれる酵素を阻害することで勃起力をサポートする効果をもたらします。PDE5を阻害すると血管を拡張する作用をもたらし、男性が性的刺激を受けた後、陰茎への血流を改善します。この作用は、勃起を維持するためにも役立ちます。
② ED治療薬 シルデナフィルの作用機序
男性が性的刺激を受けると陰茎の海綿体である海綿状勃起組織の神経末端および内皮細胞から一酸化窒素(NO)が放出されます。次に、環状グアノシン一リン酸(cGMP)が放出され、海綿体の平滑筋を弛緩させます。この作用により拡張したスポンジ状の海綿体組織に血液が流入し、勃起を引き起こします。 cGMPはその後、勃起が萎える時に放出される酵素であるホスホジエステラスタイプ5(PDE5)によって加水分解されて不活性GMPに戻ります。
勃起を引き起こす成分であるcGMPのレベルは、環状ヌクレオチド環化酵素の活性化とPDE5による分解によって制御されます。シルデナフィルが阻害するのはPDE5です。
勃起不全に苦しむ男性の身体では、通常より少ない量の一酸化窒素(NO)しか生成されません。このことは、それらが生成する少量のcGMPが同じ速度で分解されてしまうため、蓄積して長時間の血管拡張効果を引き起こすために十分な時間がないことを意味します。
シルデナフィルは、PDE5を阻害することにより勃起をサポートします。PDE5酵素の阻害は、cGMPが速く加水分解されることを防ぎ、平滑筋がリラックスすることができるので、勃起が維持できるようにサポートします。シルデナフィルは、PDE5を選択的かつ強力に阻害するお薬です。
シルデナフィルには媚薬的効果はなく、性的刺激がない場合は効果がありません。
③ ED治療薬:バイアグラ
ED治療薬としてのシルデナフィルはバイアグラという商品名でファイザー製薬より販売されています。
日本では25mgと50mgのシルデナフィルの錠剤タイプの規格が販売されており、海外では100mgも販売されています。
錠剤タイプのほか、2016年10月からバイアグラのODフィルムの発売が開始されました。
バイアグラの最大服用量は24時間に1錠となります。
過量服用すると副作用があらわれやすくなりますので、自らの体質に合った用量を服用する必要があります。
それぞれの症状と体質に合った用量を知るためにも、バイアグラを服用する前に医師に相談する必要があります。
2)肺動脈性肺高血圧症(PAH)としてのシルデナフィルの効果 作用機序
① PAH治療薬 シルデナフィルの効果 作用機序
PDE5は、肺や男性の陰茎など身体のいくつかの部分で生成される酵素で、環状グアノシン一リン酸(GMP)と呼ばれる別の物質を阻害します。GMPの作用は血管の動脈を弛緩させ拡張させます。シルデナフィルはPDE5の活性を低下させるため、肺内の血管により多くのGMPが利用可能になります。この作用は、肺動脈の血管を弛緩させ拡張することにつながります。肺の血管の弛緩と拡張は、心臓への肺血圧を低下させ、その機能を改善します。この作用により、肺の血圧が低下し、より活動的になります。
②肺動脈性肺高血圧症治療薬:レバチオ
肺動脈性肺高血圧症(PAH)としてのシルデナフィルはレバチオ(Revatio)という商品名でファイザー製薬より製造販売されています。
レバチオ(Revatio)の錠剤タイプは、2008年4月に日本の厚生労働省より承認を受け販売が開始されました。青色のダイヤモンド型の錠剤であるバイアグラ(Viagra)と区別するために、丸い白い20 mgの錠剤として製造販売されています。
その他に、レバチオにはODフィルムタイプ20mgと、レバチオ懸濁用ドライシロップ900mgがあります。日本では2018年1月から販売が開始されています
成人のPAH患者は1日20mgを3回服用します。
2017年9月、レバチオはPDE5を小児のための肺動脈性肺高血圧症治療薬として日本で初めて承認されました。小児の服用方法は医師の指示に従う必要があります。
アメリカでは成人の肺動脈性肺高血圧症を治療するためにレバチオ(シルデナフィル)が注射剤として使用されています。日本では未承認です。
レバチオ(Revatio)注射液は、シルデナフィル10 mg(12.5 mL)を含む使い捨てバイアル(ガラス瓶)として提供されます。
静脈内療法(IV)は、静脈に液体を直接注入する療法です。静脈内投与経路は、注射と高圧注射器、そして点滴としても使用できます。
静脈内経路は、循環する血液中に直接注入されるため、薬物や体液の補充を体全体に提供する最も速い方法になります。
シルデナフィルの注射療法は、一時的に経口薬を服用できないPAH患者の治療を継続するために使用されます。
推奨用量は、10 mg/12.5mLを1日3回静脈内注射(ボーラス投与)します。シルデナフィルの注射の用量は、体重によって調整する必要はありません。
シルデナフィル注射の10 mg/12.5mL用量は、シルデナフィルとその20 mg経口用量と同等の薬理効果をもたらすと予測されています。